コラム・豆知識
HTMLの文法検証は信頼性と保守性の第一歩
HTMLは多少の誤りがあっても表示されてしまいますが、それは「正しいコード」ではありません。
<html>
や<head>
、<body>
などの基本構造を正しく記述し、妥当なHTMLを書くことで、後工程のCSSやJavaScriptが安定して機能します。
検証を怠ると、環境によって予期しない表示崩れが起きる可能性があります。
W3C Validatorは構文ミス発見の基本ツール
公式のW3C Markup Validation Service
は、HTMLの構文的な誤りや非推奨タグの使用を検出するための定番ツールです。
<img>
や<a>
タグの閉じ忘れや、属性の重複・誤用など、目視では見落としやすいミスを迅速に洗い出してくれます。
一度のコーディング後に使うだけでなく、テンプレート更新時や自動生成コードにも定期的なチェックが推奨されます。
role属性とARIAの誤用にも注意
role
属性やaria-*
属性は、支援技術への意味伝達に重要ですが、HTMLタグ本来の意味を無視して多用すると逆効果になります。
例えば<button>
にrole="button"
を付与するのは冗長であり、<div role="heading">
のような構造はネイティブ要素で代替すべきです。
検証ツールによっては、これらの過剰な使用も警告として提示されます。
属性値のクォート忘れや無効な値に注意
HTMLでは属性値を"
で囲むことが推奨されており、これを省略すると予期せぬ解釈が起きる場合があります。
また、type="text"
やrel="noopener"
のような属性には、想定された値以外を設定すると無効化されてしまうケースもあります。
正しくマークアップされていても、属性の値が仕様に沿っていなければ、ブラウザや支援技術の挙動が不安定になります。
HTML Living Standardに基づいた設計を
現在のHTMLは「HTML5」よりもさらに更新されたHTML Living Standard
に基づいて進化しています。
<main>
、<section>
、<figure>
などの意味を理解し、構文検証だけでなく「意味的に正しいマークアップ」を意識することで、検索性やアクセシビリティの高いコンテンツが実現できます。
バージョンではなく「仕様と目的」に目を向けたHTML設計が、長期的な保守にもつながります。
ツールの仕組み解説
// 自動で閉じタグが不要な要素(imgなど)をリストアップ const voidElements = new Set([ 'area', 'base', 'br', 'col', 'embed', 'hr', 'img', 'input', 'link', 'meta', 'param', 'source', 'track', 'wbr' ]);
img
やbr
などの要素は、HTML上で「終了タグ」が不要です。このvoidElements
を使って、検証対象から除外します。
// 入力されたHTMLをタグごとに抽出し、スタック構造で整合性を検証 function parseAndValidateHTML(html) { const errors = []; const stack = []; const tagPattern = /<\/?([a-zA-Z][a-zA-Z0-9]*)[^>]*>/g; // ...タグ抽出とチェック処理... }
ここでは正規表現を使って、すべての<タグ>
を抽出。その後、開くタグはスタックに積み、閉じタグが来たら対応する開きタグと比較します。スタックの仕組みを使えば、入れ子構造も正しく検出できます。
// 不正なタグの組み合わせを検出し、エラー内容を記録 if (stack.length === 0) { errors.push({ type: 'orphan_close_tag', message: '...' }); }
スタックが空なのに閉じタグが現れた場合、それは「対応する開始タグがない=タグの閉じ忘れ」エラーとして記録されます。
// 閉じられていない開始タグを検出 for (const unclosedTag of stack) { errors.push({ type: 'unclosed_tag', message: '...' }); }
処理がすべて終わったあと、スタックにタグが残っていれば、それは閉じタグが不足しているということ。これも明確にエラー表示します。
// 結果を画面に反映し、エラータグをハイライト表示 function displayResults(validationResult) { // 問題のあるタグには.error-highlightを挿入 }
エラーがあった箇所は、自動的にHTMLを<span>
で囲って、色付きでハイライト表示します。ユーザーが一目で問題を確認できるように設計されています。
// ユーザーがエラーリストをクリックすると、該当のタグへスクロール function scrollToError(errorIndex) { const targetElement = document.getElementById(`error-${errorIndex}`); // スムーズにスクロール }
リスト化されたエラーをクリックすると、そのタグへスクロール。実際のHTMLと照らし合わせながら編集できるよう工夫しています。
// HTML入力欄に文字が入力されるたびに検証を実行 document.getElementById('htmlInput').addEventListener('input', function() { clearTimeout(this.validationTimeout); this.validationTimeout = setTimeout(validateHTML, 300); });